- 2014/08/01
A社は、パンおよび菓子の製造・販売企業である。従業員数は臨時社員を含めて250名、売上高は約52億円である。典型的な同族企業であり、一部を除いて、株式のほとんどを創業者一族が所有している。生産は本社社屋内の工場で行っており、直営店5店舗での販売と、一般小売店、スーパーやコンビニエンス・ストアなど量販店への卸売販売を行っている。A社では、多くの中小企業と同様に、基本的に製造部、営業部、管理部の3部門を中心とした機能別組織(職能別組織)を採用している。
A社の創業は戦前にさかのぼり、製菓製パン業界の中では老舗として位置づけられており、また市場でも老舗として認知され評価を受けている。しかしながら、長引く景気低迷の中で売上高・営業利益ともに低下しており、業績改善が急務となっている。
80年代中盤までは、直営店舗を中心に歴史と伝統のある地域一番店として事業基盤を確保してきた。バブル経済の中で、市場拡大を図るために、量販店への卸売事業を拡大させた。それに伴って売上高は大きく伸張したが、工場増設などの設備投資と社員の大量採用、さらに積極的な販売促進策のために経費が膨張した。ここ数年、不況の中で営業利益もマイナスで推移している。
また、近年、設備の老朽化も目立つようになり、加えて、こうした業績低迷の影響もあって、管理職社員のモラールも低下傾向にある。
売上高構成比ではパンの製造・販売事業が全体の85%近く占めており、販売先の売上構成では、直営店売上が15%、一般小売店が15%、量販店が70%である。その一方で、営業利益をみると、直営店の営業利益率がもっとも高く、次いで一般売店で、量販店の営業利益率がもっとも低い。とりわけ、量販店向けプライベートブランド商品については、品質の均質化、商品の高付加価値化、新製品開発への要請が厳しく、その対応がA社の事業を一層厳しいものにしている。現在、卸売事業の30%をプライベート・ブランド商品が占めており、増加傾向を示している。
A社のコスト構造をみると、過去10年でその比率に大きな変化はみられない。製造原価およびその他原価(他社製品の仕入原価)が全体の70%前後、運送費や管理費などの経費が15%前後、人件費も15%前後で推移している。 しかし、従業員構成比では、10年前35%程度を占めるにすぎなかった臨時社員の割合が、現在では55%にまで増えている。
●第1問 (配点10点)
業績改善を急務するA社は、厳しい現状を打破するために中小企業診断士にアドバイスを求めることにした。中小企業診断士は、A社の戦略策定にあたって、まずどのような分析を行うべきか。60字以内で述ベよ。
●第2問 (配点15点)
A社の競争優位性を確立する上で、着目すべき強みは、どのような点にあり、それは、どのような対策によって強化することができるか。60字以内で述べよ。
●第3問〈配点20点)
文中にあるように、A社のコスト構造に大きな変化はみられないが、臨時社員の割合が55%にまで増えていることが指摘されている。この点から類推される、A社の中・長期的課題について、100字以内で述べよ。
●第4問 (配点15点)
文中にあるように、A社では、機能別組織を採用している。この組織構造の利点を3点、それぞれ15字以内で述べよ。
●第5間 (配点10点)
現状のA社の組織構造には、どういった問題点があると考えられるか。100字以内で述べよ。
●第6問 (配点30点)
A社のような事業特性をもつ中小企業の管理職社員のモラール低下には、業績低迷といった経済要因以外に、どのような理由が考えられるか、100字以内で(a)欄に述ベよ。また、それを改善するためには、どのような対策をとることが望ましいか、100字以内で(b)欄に述べよ。
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