- 2007/02/06
【C社の概要】
C社は、1960年に創業した従業員62名の企業であり、金属の切削加工による部品製作を主力事業としている。現在は、微細な切削加工技術をセールスポイントに、コンピュータ周辺機器をはじめ各種OA機器などの部品生産を手がけている。
常時取引のある得意先は、大手・中堅電機メーカーを中心に約120社にのぼる。これらの得意先からは、「他社に比べ単価は高いが、精度が高く、仕上がりもよい」という評価を得ている。ここ数年、受注量は増加傾向にあるが、受注単価は低下、売上は横ばい、利益は減少傾向にある。C社の各得意先の部品調達方針をみると、精度の比較的低い部品や量産品などを中心に、海外生産品に切り替える傾向が強まってきている。
このため、部品の個別受注生産だけでは将来の経営が不安定であるとC社は考え、自社の持つ微細切削加工技術を生かした新製品の開発に取り組み、IC(集積回路)製造の検査工程で使用される道具の一種である治具(以下、「IC検査用治具」という)の開発に成功した。このIC検査用治具は、最終検査工程においてICの電気的特性を検査する際に、ICと検査装置とを正しく接続させる道具である。
現在、C社では、新規事業部門を営業1名(部品製作部門の営業と兼務)、技術6名(部門責任者を含む)の計7名で立ち上げ、IC検査用治具市場への参入に向けて動き出している。
【新規事業をめぐる状況】
IC検査用治具の需要は半導体市場の動向に大きく左右される。その市場動向は、好不況の波が大きいものの、長期的には拡大するものと予想されている。ユーザーはICを製造する半導体メーカーであり、C社の既存事業(部品製作)の得意先の一部もユーザーとなり得る。
IC検査用治具市場では、世界市場、国内市場とも、X社をはじめとする日本の大手メーカー数社が大きなシェアを占めており、現在のところ日本企業が優勢な分野である。国内市場では、その大手メーカー数社のほかに海外メーカー製IC検査用治具を扱う輸入商社や中小メーカーが数社ある。
IC検査用治具は、多様なICの個々の形状に合うものが必要であり、その種類は少量品や特注品を含めると1,000種類以上にも及ぶ。大手メーカーは、100種類程度の標準的なIC検査用治具(標準品)を中心にユーザーに直接販売している。標準品のうち需要の多いものは常時在庫品とし、それ以外のものは受注生産品とするのが一般的である。一方、中小メーカーは、標準品のなかでも比較的需要の少ないもの(少量品)、および特注品を中心に取り扱い、通常、代理店経由で販売している。
近年、標準品の領域では、大手メーカーは海外生産に移行するなどして価格競争力を強化している。この結果、標準品領域での大手メーカーのシェアは拡大傾向にあると同時に、IC検査用治具の価格は全体的に低下傾向にある。また、大手メーカーが在庫を持つ標準品だけでなく、少量品や特注品についても、顧客への短納期対応が強く求められてきている。
今後、ICの形状はますます多様化し、さらに多くの種類のIC検査用治具が必要とされる見通しであり、少量品・特注品領域の拡大が見込まれる。また、ますます高密度化するICに対して、短時間で正確な検査が可能なIC検査用治具の開発が求められており、各社ともこれに対応した製品の開発を急いでいる。
この点、C社のIC検査用治具は、ICと接触する金属部分を自社の微細切削加工技術を生かして独自の形状とし、これによって、高密度のICを検査する場合に、他社製品に比べて短時間で正確な検査を可能とした。今春の半導体関連の展示会で試作品を出展したところ、現在まで半導体メーカーからの問い合わせが相次いでいる。
C社ではIC検査用治具の製造について、設計、金属(前述のICと接触する金属部分を含む)の切削工程と、組立・調整・検査といった工程は社内で対応し、当面、樹脂部品の製造やメッキ加工などは外注することを予定している。
●第1問 (配点20点)
(設問1)
問題文から、IC検査用治具の市場環境を読みとり、C社がIC検査用治具市場に参入するにあたって、(a)有利と捉えられる市場環境、および(b)事業を行ううえでリスクと捉えられる市場環境を2点ずつあげ、それぞれ40字以内で簡潔に説明せよ。
(設問2)
C社がIC検査用治具市場に参入するにあたって、C社の経営面、技術面における(a)現在の優位点、および(b)これから強化しなければならない点を2点ずつあげ、それぞれ40字以内で簡潔に説明せよ。
●第2問(配点30点)
C社がIC検査用治具市場で成功するためには、参入時における(a)C社で取り扱うIC検査用治具の種類、および(b)販売チャネルについてそれぞれどのようにすべきか。 C社に対するあなたのアドバイスを、その理由とともにそれぞれ80字以内で簡潔に述べよ。
●第3問(配点20点)
展示会で試作品をみた大手メーカー(X社)から、C社が開発したIC検査用治具をOEM(相手先ブランドによる生産)供給してほしいとの申し出があった。C社の立場に立ち、X社へOEM供給することについての(a)メリット、および(b)デメリットを 2点ずつあげ、それぞれ40字以内で簡潔に説明せよ。
●第4問(配点15点)
C社が、IC検査用治具の短納期での納入を実現するためには、コンピュータおよび通信ネットワークをどのように活用すべきか。在庫管理以外で、あなたが最も効果があり、かつ現実的だと思う具体的方法を1つあげ、80字以内で簡潔に説明せよ。
●第5問(配点15点)
C社の新規事業部門の技術スタッフから「2~3年後をめどに工場を増設し、IC検査用治具の樹脂部品を外注から社内での製造へと切り替えるべきだ」との意見があった。この意見に沿って樹脂部品の製造を社内での製造に切り替えた場合に増大する事業のリスクのうち、あなたが最も重要だと思うものを1つあげ、80字以内で簡潔に説明せよ。