- 2002/10/02
【C社の概要】
C社は、1961年に創業した書籍製本専業の企業であり、従業者数は代表取締役(55歳)以下、営業部門6名、生産管理課を含めた生産部門40名、総務その他で3名の合計50名である。生産部門の40名には、臨時社員(パート)15名を含んでいる。
常時取引のある得意先は約50社で、その大半が出版社である。主な得意先は学術書や児童書を手掛ける中堅出版社であり、得意先上位3社で総売上の約7割を占める。C社は、都心の中央部に立地しており、顧客である出版社まで距離的に近い。「顧客に支持される上製本業者」を標傍し、他社と比較して価格はやや高いが、「誠実」「品質が高い」との評判を得ている。
しかし、製本需要の低迷に加え、厳しい価格競争から同業者に受注をとられるケースも出てくるなど、C社の近年の業績は低迷している。最盛期(10年前)には40,000千円程あった月商も、今年度は約30,000千円にまで減少し、月次利益はゼロ付近で推移している。従業員の高齢化も進み、労働分配率は60%を超過している。
製本とは一般的に「印刷物などを糸・針金・接着剤などで綴じて表紙をつけ、小冊子・書籍などに形づくることであり、製本業は、通常、出版社、印刷業者、または同業者から製本を受注する。書籍製本には大別して、学術書、児童書、美術書などのいわゆるハードカバーを生産する上製本と、雑誌や文庫本などを生産する並製本があるが、C社は上製本のみを取り扱っている。近年、書籍市場では、上製本の低迷が並製本に比べて著しい。
【受注の状況】
C社は、すべて受注生産であり、書籍タイトルごとに1つの生産ロットとなる。ロットサイズは大きいもので約5,000部、小さいもので約500部である。最近は小ロット化が進み500~2,000部の注文が大半を占める。
製本加工する印刷物はすべて支給され、通常、注文は印刷物支給日の1週間前までに入る。1週間の受注豊は、多い週で約40,000部、少ない週で約24,000部である。なお、稼働日数は週5日、所定内労働時間は週40時間となっている。
C社の製木工程は、主に、前工程(折り・断裁など)→本工程(丁合・糸綴じなど)→後工程(カバー掛け、帯掛けなど)に分かれている。C社では、これらの工程をすべて内製で対応しており、通常、納期は印刷物の支給日から3日~1週間である。近年、500~1,000部程度の注文を中心に「印刷物を3日後に支給するので、支給日から2日後に仕上げて欲しい」といった、さらなる短納期の要請も強い。
【生産の状況】
得意先(出版社)から注文が入ると、印刷物支給日を確認し、社内の生産計画に組み込む。生産計画は本工程のみ作成されており、生産管理課が社内のおおよその生産能力(1日8時間、8,000部/日)を基準として、毎週木曜日に翌週の生産計画を立てて現場に指示する。生産計画については、生産ロットごとに「何日に」「どの本を(タイトル)」「いくつ(部数)」生産するかをコンピュータ上の生産計画表に入力する。
本工程はライン化されており、1ラインを保有している。ラインでは、ロットを替えるたびに段取り替えが必要となる。本工程の作業者は10名で、ライン稼働時には印刷物の投入作業やラインの監視に従事し、段取り替えは全員で対応する。段取り替え時間は1回につき45分間(750部を加工する時間に相当)とみて、生産計画に織り込んでいる。例えば、1日3回の段取り替えがある場合には、1日の生産量は5,750部(=8,000部-2,250部)となる。
しかし、各ロットの仕様によって段取り替えに要する時間や生産スピードにバラツキがあるのに加え、飛び込みの受注や設備の不調によるラインの停止によって、生産計画通りに生産が進まないことが週に2日程度ある。その場合には、残業によって対応しており、残業代もコストアップの大きな要因となっている。さらに、重要な得意先からの飛び込みの注文を優先することによって工程が混乱し、他の注文について納期遅れが生じることがある。なお、各ロットの本工程終了時、生産実績をコンピュータに入力し、計画と実績とを対比することができる。
前工程は、本工程の生産予定日に間に合うように、本工程の生産計画をみながら前工程のグループ長が指示して作業する。作業者は12名で、2,000部の印刷物であれば、約2時間で前工程の作業を終えることができる。作業のないときは、後工程の応援にまわる。前工程で加工された印刷物は、本工程のラインに投入されるまで通常1~2日倉庫で保管されている。
本工程を終了したロットは、適度な圧力をかけて12時間程度置くことによって品質を安定させ、その後、後工程に着手する。後工程は、正社員1名と臨時社員による手作業であり、毎日、作業量に応じて臨時社員が配置される。1名につき8時間で約500部仕上げることが可能である。
第1問 (配点20点)
最近、同業者に得意先の注文をとられるケースが出てきている。C社の外部環境・内部環境(経営資源など)の分析に基づいて、C社が得意先への優位性を確保するために、何を自社の生産面におけるセールスポイントとすべきか。環境分析およびそこから導かれるセールスポイントを200字以内で説明せよ。
第2問 (配点60点)
(設問1)
中小企業診断士であるあなたは、生産部門において発生している問題点や受注状況の変化などを踏まえた生産計画に関する提案をC社から求められた。生産計画に関して、最も重要だと考える提案を1つ挙げ、その内容を200字以内で説明せよ。
(設問2)
C社の生産性・収益性を向上させるため、あなたは前工程、本工程、後工程のうち、どの工程を重点的に改善・強化すべきであると考えるか。(a)改善・強化すべき工程を1つ選び、(b)その工程を選んだ根拠を列挙せよ。
(設問3)
C社の生産現場で生じている問題点を踏まえ、C社における作業管理上の改善案を1つ挙げ、具体的な改善手順とともに200字以内で説明せよ。
第3問 (配点20点)
C社では、コンピュータ上の生産管理システムとインターネットを活用した営業担当者向け支援システムを開発したいと考えている。顧客へのサービス向上、利便性提供といった観点から、考えられる支援システムの内容を1つ挙げ、150字以内で具体的に説明せよ。