2005年(平成17年)事例Ⅲ

【C社の概要】

C社は、鋼鉄製構築物を主とした各種公園施設(モニュメント、ベンチ、照明施設などで遊具施設は除く)、エクステリア(フェンス、門扉、ポールなど)の製造・販売を事業としている。主力の各種公園施設の最終ユーザーのほとんどは、地方自治体や学校などの公的機関であるが、直接の得意先としては設計業者、ゼネコンなどである。ここ数年、公共事業の減少に直面し、売上減を余儀なくされている。他方、エクステリアについては、一部ホームセンター向けの家庭用自社ブランド製品も手がけているが、価格競争が激しく売上は伸び悩んでいる。

前期の売上高は17億円で、前々期に比べ3%減少した。従業員は75名、大都市圏に本社、地方圏に二つの工場がある。本社(24名)には、総務、営業、開発・設計・デザインの各部門が、第1工場(26名)には、管理 ・技術(設計を含む)部門と短納期製品、大物製品を手がける製造・工事部門があり、第2工場(25名)には、管理・技術部門と納期に余裕のある製品、小物製品を手がける製造・工事部門が配置されている。なお、C社の主力製品である各種公園施設は、大物(たとえば、野球場の大型照明機器)から小物(たとえば、公園ベンチ)まで多種多様であるとともに、個別生産が大半である。

C社の鋼鉄製構築物については、表面に安定した錆の皮膜を形成し保護した耐候性鋼材を使用していること、大気腐食に関して一般の塗装に比べておよそ倍ほどの効果を持つ塗装システムを備えていること、環境面を重視した塗料の開発を行っていることなど、表面処理技術には定評がある。こうした技術的な特徴が、C社のセールスポイントでもある。また、C社は塗装技術のさらなる向上に向けて大学との共同研究に積極的に取り組んでいる。

C社は公共事業の低迷による売上減を補うため、次のような対策を考えている。一つは、家庭用エクステリア事業の強化である。その具体的方策として、数点ある家庭用エクステリア製品のうち、門扉については中国からの部品調達(本体部分)によるコストダウンを検討している。この場合、中国から調達した部品を日本国内で組み込み、製品として完成させるという方式を考えている。経営者は、頻繁に中国を視察し、納期、品質などに問題がないかを探っているが、いまだに最終結論を出せずにいる。

もう一つは、デザイン、構造計算のできる体制を活かした各種公園施設における自社製品の開発である。しかし、公園施設では、条件ごとにデザインコンセプトが異なるなど、標準品の提案が難しいのが実情である。

【公共事業等の受注から生産、設置までの流れ】

C社の主力製品である各種公園施設等の受注から現場設置までの流れは、次のとおりである。まず、得意先であるゼネコンや設計業者に、C社の特徴(充実している開発・デザインカ、技術力など)を売り込むことから始まる。その結果、得意先からC社に企画提案の打診、見積依頼があるなど、成否は別にして、その時点から実質的な受注活動が開始されることになる。そして、得意先が落札し、C社の提案や見積が採用されると、C社の正式受注の運びとなる。その後、本社で全体設計をし、工場への生産指示が行われる。工場では、詳細設計を実施し、納期にしたがって日程計画を組む。大まかには、材料購入、切断、製缶・板金、溶接・組立、塗装、梱包、搬送、据え付け工事という手順になる。

製品生産は、社内生産を基本としているが、社内でできない曲げ加工、小物部品加工、メッキなどについては外注に依存している。また、繁忙期には、各種の作業が外注に出されることになる。

ところで、 C社の納期管理は、1年ほど前から改善されつつある。それまでは、本社営業では生産の進捗状況を正確に把握することができず、納期が近づくと一つひとつ工場に問い合わせていた。それが現在では、工場から日程計画に基づく進捗状況(受注ごとの納期、生産予定などが記載された一覧表)が営業に電子メールで送られてくるようになり、営業からの納期確認は減少している。

しかし、こうした改善も営業では、厳しさを増している短納期要請には十分に応えているとは考えていない。それは、これまで営業では受注活動に際して工場の納期管理が甘いことを前提に、納期設定を、たとえば特急品の受注が入っても対応できるように意図的に余裕を持たせるという努力をしていたからである。そのような対応にも限界があり、営業としては工場の機動性に富んだ生産体制の整備を望んでいる。

次に、完成した製品は、公園等の設置場所に搬送され据え付け工事が行われる。この据え付け工事の多くは自社で行っているが、受注によっては納品で終わり他社が据え付け工事を行うケースもある。据え付け工事の際に発見される不良は、自社による据え付け工事では現場の手直しでほとんど処理しているが、他社による据え付け工事ではそうした対応ができず工場に戻されるケースがある。その不良の多くは、輸送の際のキズ、設置寸法の違いなどである。C社は製品の品質については自信を持っているが、このようなクレームについてはいまだ抜本的な対策を講じてはいない。

現在、工場ではISO9001取得に向けてプロジェクトテームが立ち上がっている。この取得は、営業上の理由もあるが、取得活動、維持活動を通しての従業員の活性化を一つの目的としている。また、C社は第1工場の工場長を外部からスカウトし、様々な工場改革にも乗り出している(近々、第2工場の工場長を兼務する予定)。その一つが先の納期管理の改善であった。しかし、営業の要望に応えるには、生産体制を整備することが急がれるが、新工場長は工場改革については当面慎重に進めようと考えている。それは、一つには新工場長がC社の業種業態に不慣れであること、二つにはこれまでの工場運営がいわゆる職人気質の現場作業者にまかせ生産面を重視する傾向が強かったこと、が理由にあげられる。

●第1間 (配点40点)

公共事業の低迷による売上減に直面しているC社は、もう一つの事業の柱として家庭用エクステリア事業の強化を計画している。 このことについて、以下の設問に答えよ。

(設問1)
家庭用エクステリア事業を強化するにあたって、C社の強みとなる点を二つあげ、それぞれ50字以内で述べよ。

(設問2)
各種公園施設の個別生産とは異なり、標準品生産を条件とした場合の家庭用エクステリア製品の生産体制は、どのように整備することが望ましいか。その理由をあげながら100字以内で説明せよ。

(設問3)
C社では、中国から部品を調達することで、コスト競争力を高めることを検討している。こうした海外からの部品調達についての留意点を100字以内で述べよ。

●第2問 (配点20点)

C社では工場改革に対する考え方が、工場と営業では違っている。その違いを踏まえた工場改革のあり方を120字以内で提案せよ。

●第3問 (配点20点)

C社へのクレームについて、何が問題なのかを説明するとともに、その改善策を120字以内で述べよ。

●第4問 (配点20点)

特急品、納期変更、仕様変更など、多様な要請がある公共事業等の営業活動の場において、インターネットを活用して迅速に対応するには、どのような項目をどのように管理すればよいかを120字以内で述べよ。

★ヒント★

第1問

(設問1)
本問は、問題文の内容から、家庭用エクステリア事業の強化にあたって、C社の経営資源に関する情報を適切に読み取ることができるかの情報把握能力を問うものである。

(設問2)
本問は、家庭用エクステリア事業の業界事情を踏まえた製品特性を理解し、実行可能な生産体制の整備を提案できるかの問題解決能力を問うものである。

(設問3)
本問は、時代の潮流としての海外生産、海外調達における諸問題を理解した上で、C社が検討している部品の海外調達に対する留意点を的確に提示できるかの問題解決能力を問うものである。

第2問
本問は、工場改革に対する部門間の考え方の違いを適切に分析し、実効性のある解決策が提案できるかの問題解決能力を問うものである。

第3問
本問は、C社におけるクレーム上の問題の所在をとらえ、その解決策を提案できるかの問題分析能力・改善提案能力を問うものである。

第4問
本問は、C社における情報伝達の問題点を適切にとらえ、部門間の連携を図る実効性のある提案ができるかの問題解決能力・改善提案能力を問うものである。

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