- 2006/02/06
【C社の概要】
C社は、建設資材を主体に農業機械部品や産業機械部品などの鋳物(いもの)製品を生産、販売している。建設資材の大部分は下水道や、埋設された電気・通信ケーブル用のマンホールの蓋である。農業機械部品はトラクターの駆動関連部品、産業機械部品はブルドーザーやフォークリフト、工作機械の構造関連部品などである。取引先は、マンホール蓋については土木建設企業、農業機械部品や産業機械部品については各部品メーカーである。
C社はマンホール蓋などの鋳物工場として1954年に創業した。会社組織は営業部、設計部、製造部、総務部からなっている。現在の従業員数は50名、一般に3K職場といわれる作業環境が影響して若手人材確保が難しく、高齢化が進んでいる。年商は約10億円である。
公共事業予算の縮小や海外製品との競争激化などの影響を受け、マンホール蓋の受注量が減少し、売上高が低迷した時期があった。その対応としてC社では、中小鋳物工場が減少するなか、積極的に鋳造(ちゅうぞう)工程の生産能力の増強を進めるとともに、機械加工工程と塗装工程の新設により一貫生産体制を確立することで、農業機械部品と産業機械部品の受注獲得に成功した。その際、鋳造技術に精通した中堅エンジニア3名を社内から選抜して営業部をつくり、新市場の開拓を行わせたことも大きな力となった。
現在の売上構成比は、建設資材55%、農業機械部品30%、産業機械部品15%となっている。農業機械部品と産業機械部品の受注量は増加傾向にあるが、これらの部品では顧客からの軽量化、複雑形状化要求が強くなっていて、鋳造技術の向上が求められている。
さらに現在、自動車部品2次下請企業でもある産業機械部品の取引先から、C社としては新規受注となる自動車部品の生産依頼があり、その獲得に向けて検討を進めている。
【C社の生産概要】
工程は図1に示すように鋳造工程、後処理工程、機械加工工程、塗装工程、検査発送工程の5工程である。
主要製品のマンホール蓋は、地方公共団体や通信会社などの事業主体ごとに仕様が異なるため品種が多く、さらにこれら事業主体の予算確定後、C社に発注が行われるため受注量の季節変動が大きい。このため、営業部で得ている顧客情報の予想を基に需要の多い規格品などについてはあらかじめ見込生産し、受注が確定すると在庫品から納品する。一方、農業機械部品や産業機械部品は取引先からの受注が確定した製品を生産している。
生産計画は、鋳造工程の計画のみが立案される。その立案方法は、まず受注内容が確定した製品について納期を基準に計画し、さらに余力部分にマンホール蓋などの見込生産品を加えて作成する。鋳造工程以降の後処理工程、機械加工工程、塗装工程、検査発送工程は、前工程から運搬されてきた仕掛品の品種、数量を確認した上で、段取り回数が最小になるようそれぞれの工程担当者が加工順を決めている。1日4回(4ロット)の鋳造作業が行われているが、農業機械部品や産業機械部品の納期遅延が生じている。その対策の1つとしてC社では、受注処理、生産計画、生産統制、在庫管理などを統合したIT化の検討を進めている。
新規受注の問い合わせがあった場合は、営業部が顧客と技術的な打ち合わせを行い顧客の要望を把握し、その内容を設計部に伝え図面等仕様書を作成する。その仕様書が顧客と合意されると、製造部に引き渡して生産準備し、生産計画に織り込んで、資材調達の後製造される。
【改善チームによる調査結果】
C社では現在、自動車部品の新規受注を目指して、製造部内に改善チームをつくり、生産能力向上を目的とした改善活動を実施している。
それによると、製造現場では、鋳造工程後の仕掛品が多く、その置き場に大きなスペースが必要になり、フォークリフトによる製品の移動は、散在する仕掛品置き場を避けて走行している。またこの仕掛品によって、多台持ちを行っている機械加工工程の作業についても設備間の移動が非常に困難な状況である。このため、製造リードタイムが長期化し納期遅延が生じる原因となっている。
C社では工場全体の生産能力を鋳造工程の処理能力で把握しており、受注増への対応策として鋳造工程の生産能力増強を特に進めてきた。しかし、改善チームが行ったマンホール蓋の主力製品の工程分析によると、図2に示すように機械加工工程がネック工程となっていた。この結果は他製品の工程分析でも同様の傾向を示していて、機械加工工程の残業が日常的に生じている原因が判明した。
そこで改善チームは、機械加工工程の設備稼働状況を調査し、図3に示す結果を得た。稼働率は48%と低く、非稼働として停止37%、空転15%となっている。停止は、刃物、治具(ジグ)の交換や加工前後の製品運搬、機械調整などの段取り作業を主な要因として生じている。また空転は、加工が終了し製品を脱着する必要があるとき、作業員の作業遅れによって設備が待っている状態により生じている。
●第1問(配点40点)
C社では、現在取引している産業機械部品メーカーから新規に自動車部品の生産依頼があり、新規受注の獲得に向けて検討している。この計画について以下の設問に答えよ。
(設問1)
C社が自動車部品分野に参入する場合、強みとなる点を2つあげ、それぞれ40字以内で述べよ。
(設問2)
自動車部品の受注獲得は、C社にとってどのようなメリットがあるのか100字以内で述べよ。
(設問3)
自動車部品の受注獲得には、自動車業界で要求される短納期に対応する必要がある。そのためにはどのような改善策が必要なのか、100字以内で述べよ。
●第2問(配点20点)
C社の設備投資は、鋳造工程が優先されてきた。これによって生産工程に生じている問題点と、その改善策を100字以内で述べよ。
●第3問(配点20点)
C社は、納期遅延の解消を目的に生産管理のIT化を計画している。それには、どのように納期管理をし、その際、どのような情報を活用していくべきか、120字以内で述べよ。
●第4問(配点20点)
海外製品との競争が厳しい時代のなかで、今後もC社は国内生産を維持する考えである。そのためにC社が強化すべき点は何か、その理由とともに140字以内で述べよ。
★ヒント★
第1問
(設問1)
鋳物工場として創業したC社の事業変遷、事業内容を把握し、自動車部品生産への新規参入の検討に際して考慮すべき C社の強みを分析する能力を問う問題である。
(設問2)
C社の事業内容を把握し、自動車部品生産への新規参入によって得られるC社のメリットを分析する能力を問う問題である。
(設問3)
短納期を要求される自動車部品生産への新規参入の検討を行っているC社の生産体制に関する課題を把握し、その改善策を提案する能力を問う問題である。
第2問
現在まで行ってきた設備投資によって生じているC社の生産工程に関する課題を把握し、解決する能力を問う問題である。
第3問
納期遅延の解消を目的とした生産管理のIT化を計画しているC社の課題を把握し、納期管理の方法を提案する能力を問う問題である。
第4問
C社の経営環境を把握し、国内生産を維持していくために必要な戦略と強化策について助言する能力を問う問題である。