【事例Ⅰ】ミニ演習:一族経営(同族経営)の問題

中小企業診断士2次試験の
「事例Ⅰ(組織・人事)」において、
一族経営(同族経営)は非常に頻出のテーマです。

一族経営特有の
「所有と経営の一致」
による迅速な意思決定という強みと、
「公私混同」や「後継者問題」
「プロパー社員の意欲低下」
といった弱みの対比を軸にした演習問題。

【与件文】

A社は、地方都市で創業80年を迎える老舗の味噌・醤油醸造メーカーである。資本金3,000万円、従業員数45名であり、代々一族による同族経営を続けている。現社長(65歳)は3代目で、その長男(38歳)が専務として後継者含みで入社している。また、親族数名が取締役や部長職といった要職を占めている。

A社の強みは、一族経営ならではの長期的な視点に立った投資と、トップダウンによる迅速な意思決定である。10年前、現社長の決断で多額の投資を行い、最新の自動化ラインを導入したことで、生産効率は大幅に向上した。

しかし、近年、一族経営の弊害も表面化している。重要な意思決定が親族のみの会議で決定され、事後報告となることが多いため、非同族のプロパー社員(生え抜き社員)の疎外感が強まっている。特に、優秀な若手・中堅社員から「いくら成果を上げても、上層部は親族で固められており、昇進に限界がある」という不満が出ており、離職が相次いでいる。

専務は、将来の承継を見据え、組織の近代化を提案している。具体的には、外部から専門知識を持つ人材の登用や、能力主義に基づいた公正な評価制度の導入を考えている。しかし、保守的な親族役員からは「一族の結束が乱れる」と反対の声が上がっており、社長も板挟みとなっている。

【分析のポイントと解説】

1. 「公」と「私」の分離

一族経営の最大の問題は、
意思決定が「リビングルーム(非公式)」で行われ、
組織の「会議室(公式)」が形骸化することです。

これを「組織の近代化」によって解決するのが
診断士的なアプローチです。

2. プロパー社員のモチベーション

非同族社員にとって、
将来のキャリアが見えないことは最大の離職要因になります。

「 distributive justice(分配的正義:報酬の公平さ)」
だけでなく、
「procedural justice(手続的正義:評価プロセスの公平さ)」
を担保することが重要です。

3. 事業承継の多面性

承継は「社長の椅子」を譲るだけではありません。

古参の親族役員(抵抗勢力になりやすい)との関係調整や、
専務を支える「チーム」の構築がセットで必要になります。

一族経営の事例では、
親族感情という「ドロドロした部分」を
いかに「論理的な組織論」で整理できるかが試されます。

この演習でその感覚を養ってください!

第1問(配点20点)

A社のような一族経営における「組織上の強み」と「組織上の弱み」について、与件文の内容を踏まえ、それぞれ40字以内で述べよ。

第2問(配点30点)

プロパー社員の士気を高め、離職を防止するために、専務が導入を検討すべき「人事管理上の施策」について、100字以内で助言せよ。

第3問(配点25点)

専務が提案している「外部人材の登用」を成功させるために、受け入れ側であるA社の組織文化や体制において配慮すべき点を100字以内で述べよ。

4問(配点25点)

社長から専務への事業承継を円滑に進めるために、現社長が果たすべき「組織・人事上の役割」について、100字以内で助言せよ。

【模範解答】

第1問

強み:長期的な視点での投資判断が可能であり、トップダウンによる迅速な意思決定ができる。
弱み:要職を親族が独占し、不透明な意思決定により非同族社員の疎外感や不満を招く点。

第2問

助言は、①親族・非同族を問わず能力や成果を公正に評価する人事評価制度を構築し、②プロパー社員でも実力次第で重要なポストに就けるキャリアパスを明示することで、不公平感を解消し意欲向上と定着を図ることである。

第3問

配慮すべき点は、①外部人材の役割と権限を明確にし、既存社員との軋轢を防ぐこと、②親族中心の非公式な意思決定プロセスを改め、会議体等の公式なルートで情報共有と意思決定を行う透明性の高い組織風土を作ることである。

第4問

役割は、①専務に段階的に権限を委譲し、社内外に次期社長としての存在感を示すこと、②親族役員と専務の橋渡し役となり、組織改革への理解を求めるとともに、専務を支える補佐体制をプロパー社員の中から構築することである。

 

 

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