【事例Ⅰ】(組織・人事)演習問題「属人化の弊害」

【与件文】

A社は、特定分野の精密金型を製造する従業員30名の企業である。現社長(65歳)は、かつて大手メーカーで「伝説の職人」と呼ばれた技能者であり、その圧倒的な技術力と社長個人の人脈によって、難易度の高い案件を次々と受注し、業績を伸ばしてきた。

しかし、近年、A社の成長に陰りが見え始めている。受注は堅調だが、社長がすべての案件の設計確認や工程指示を一人で行っているため、社長がボトルネックとなり、納期遅延が常態化している。また、製造現場では、勤続25年のベテラン工場長が「俺の勘がすべてだ」と、独自のやり方で作業を進めており、若手社員への指導も「見て盗め」というスタイルを崩さない。

その結果、若手社員の定着率は低く、入社3年以内の離職率が50%を超えている。若手からは「社長や工場長の頭の中にしか正解がないので、自分で考えて動けない」という不満が出ている。社長は、自身が引退した後の技術承継と組織運営に強い不安を感じ、組織改革に着手することを決意した。

 

第1問(配点20点)

A社において、経営や技能の「属人化」が引き起こしている弊害について、組織運営の観点から2つ抽出し、それぞれ40字以内で述べよ。

第2問(配点30点)

社長が担っている「案件管理や意思決定」の属人化を解消するために、A社が導入すべき組織的な仕組みについて、100字以内で助言せよ。

第3問(配点25点)

工場長が持つ「熟練技能(暗黙知)」を次世代に承継させ、若手の早期戦力化を図るための施策を、100字以内で述べよ。

第4問(配点25点)

A社が属人化を脱し、「組織的経営」へと移行するために、人事評価制度においてどのような評価項目を追加すべきか。100字以内で助言せよ。

 

【模範解答】

https://note.com/nakybusiness/m/m95dab47c4235

【解答の解説と分析のポイント】

1. 「属人化」を「情報の独占」と捉える

属人化の最大の問題は、
特定の人の頭の中にしか情報がないため、
その人がいなくなると組織が止まることです。

診断士試験では
「可視化(見える化)」
「共有」
「標準化」
がキーワードになります。

2. ボトルネックの解消

第2問では、
社長に集中している権限を分散させる必要があります。
これを「権限委譲」と呼びます。

また、個人の記憶ではなく
「ITシステム」にデータを移すことが、
組織的経営への第一歩です。

3. 暗黙知の形式知化(SECIモデル)

第3問は事例Iの王道です。
職人の「勘」をそのままにせず、
誰でも再現できるように
「マニュアル(形式知)」
に落とし込むプロセスを必ず書きましょう。

4. 評価制度による「行動変容」

第4問では、
職人に「教えるメリット」を感じさせる必要があります。

「教えることも仕事のうち」と定義し、
それを評価に反映させることで、
組織文化を書き換えます。

 

受験者に受けたちょっとしたアドバイス

2次試験の事例Iを解くときは、
「社長を楽にさせてあげる」という視点を持つと、
解決策が見えてきやすくなります。

社長が忙しすぎる → 権限委譲しよう。
社長しか知らない → 情報共有・IT化しよう。
社長の後継者が不安 → 組織化・マニュアル化しよう。

「属人化」という言葉が出たら、
反射的に
「標準化(誰でもできるようにする)」と
「組織化(仕組みで動くようにする)」を
セットで思い浮かべてください。

これだけで、一貫性のある「合格答案」の骨組みが出来上がります!

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