【事例Ⅰ】における「モチベーション」(動機付け)演習問題

「事例I(組織・人事)」において
「モチベーション(動機付け)」は
最頻出テーマの一つです。

特に
「成長が止まった老舗」や
「急拡大したベンチャー」で
起こりやすい問題となります。

【与件文】

A社は、資本金2,000万円、従業員数40名の精密プラスチック部品メーカーである。先代社長が築いた大手家電メーカーとの強固な信頼関係を背景に、長年安定した業績を維持してきた。しかし、近年の主要顧客の海外移転や製品のコモディティ化により、受注単価は下落し、業績は足踏み状態にある。

現社長(58歳)は、この状況を打破するために3年前に「新規事業開発チーム」を立ち上げ、若手・中堅の優秀層を抜擢した。しかし、既存の製造現場を支えるベテラン社員たちは「自分たちの稼ぎを新規事業に食いつぶされている」と冷ややかな視線を送っている。一方、抜擢された若手社員も、既存事業の多忙な応援に駆り出されることが多く、新規事業に専念できない環境に不満を募らせている。

A社の人事評価は、創業以来「年功序列」の傾向が強く、成果や新しいことへの挑戦が給与や賞与に反映されにくい。最近の社内アンケートでは、「頑張っても頑張らなくても評価が変わらない」「社長が何を考えているのか伝わってこない」といった声が目立つようになり、将来を嘱望されていた30代の若手リーダーが「他社で自分の力を試したい」と退職を申し出る事態となっている。

第1問(配点20点)

A社において、社員(ベテランおよび若手)のモチベーションが低下している要因を、組織管理の観点から2つ抽出し、それぞれ40字以内で述べよ。

第2問(配点30点)

若手社員の離職を防ぎ、新規事業への挑戦意欲を高めるために、H社が導入すべき「人事評価および報酬制度」の改善案を100字以内で助言せよ。

第3問(配点25点)

既存事業を支えるベテラン社員の不満を解消し、全社一丸となった組織風土を醸成するために、社長が取り組むべき「内部コミュニケーション」の施策を100字以内で述べよ。

第4問(配点25点)

H社が今後、持続的な成長を遂げるために、組織構造をどのように見直すべきか。現状の「職能別組織」の弊害に触れつつ、100字以内で助言せよ。

【模範解答】

第1問

①評価が年功的で挑戦や成果が報われず、不公平感や無力感が生じている点。
②既存事業と新規事業の役割分担が曖昧で、業務負担の偏りと葛藤がある点。

第2問

助言は、①成果や能力、挑戦を反映する職能資格制度を導入し、②新規事業の目標達成度を賞与等に直結させ、③キャリアパスを明示することで、頑張りが正当に評価される仕組みを構築し、意欲向上と定着を図ることである。

第3問

施策は、①社長が経営理念や長期ビジョンを直接語る場を設け、全社での危機感と新事業の意義を共有し、②既存事業の貢献を称える表彰制度を導入してベテランの自尊心を高め、相互理解を促す対話を強化することである。

第4問

助言は、各部門の役割を明確にした上で、新規事業を独立した「事業部」とし、権限と責任を委譲することである。部門間のセクショナリズムを排除し、全社資源の最適配分と迅速な意思決定が可能な体制へ移行する。

【解答の解説と分析のポイント】

1. 「衛生要因」と「動機付け要因」の区別

年功序列や給与への不満は、
解決しても
「不満がなくなるだけ(衛生要因)」
になりがちです。

モチベーションを高めるには、
「称賛・達成・成長」(動機付け要因)
に焦点を当てた解答が求められます。

2. ダブル・バインド(二重拘束)の解消

若手が
「新規事業をやれ」と言われながら
「既存の応援もしろ」と言われる状況は、
事例Ⅰでよく出る「役割葛藤」です。

これを解消するために、
組織図の変更(第4問)や
役割の明確化を提言するのが
診断士のセオリーです。

3. 内発的動機付けの重要性

社長のビジョン共有(第3問)は、
単なる精神論ではありません。

「なぜこの仕事が必要なのか」という
「意味づけ」を行うことで、
社員の納得感を高め、
行動を変容させる重要な組織施策です。

受験者に受けたちょっとしたアドバイス

事例Iの
「モチベーション問題」
を解くときの裏技は、
「不満の裏返しを解決策にする」
ことです。

●「評価が不透明」
→ 「評価基準の公開」

●「将来が見えない」
→ 「キャリアパスの明示」

●「社長の顔が見えない」
→ 「ビジョンの浸透」

●「やらされ感がある」
→ 「目標管理制度(MBO)での参加意識」

このように、
与件文にある「愚痴(不満)」を、
経営理論という「翻訳機」にかけて、
具体的な「制度・施策」として打ち出すだけで、
合格点にぐっと近づきます。

文字数が余ったら、
必ず
「士気の向上を図る」
「組織の活性化に繋げる」
といった、
施策の「目的」まで書き切るのが
高得点のコツです。

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