「市場変化への戦略的適合の遅れ」演習問題

「事例I(組織・人事)」および
「事例II(マーケティング)」の
複合テーマとして、
「市場変化への戦略的適合の遅れ」
を題材にした演習問題となります。

変化の激しいIT業界や
製造業でよく見られる、
「過去の成功モデルへの固執」
が成長を阻害するケースを想定しています。

【与件文】

A社は、資本金4,000万円、従業員数80名のシステム開発会社である。創業以来、大手金融機関の基幹システム保守・運用という「安定・低リスク」なビジネスを主軸に成長してきた。A社の強みは、金融業界特有の堅牢なシステム構築ノウハウと、長年の取引で築いた深い信頼関係にある。

しかし、近年、金融業界でも「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が加速し、クラウド活用やAIによる顧客分析、スマートフォンアプリを通じた迅速なサービス提供など、アジャイル(機動的)な開発へのニーズが急増している。

A社の社長(60歳)は、こうした変化を感じつつも、「金融システムは安定が第一」との考えを変えず、従来のウォーターフォール型(計画重視)の開発体制と、既存の保守案件に人員の8割を割く方針を継続している。その結果、既存顧客からも「新しい提案がない」と不満を持たれ、クラウド案件などは新興のITベンチャーへ流出し始めている。

また、社内の若手エンジニアからは「最新技術に触れる機会がなく、キャリアが不安だ」との声が上がり、最新スキルを持つ中堅層の離職が相次いでいる。社長は、このままでは市場から取り残されるという危機感を抱き、戦略の再構築を決意した。

第1問(配点20点)

J社が直面している「外部環境の変化」と、それに対する「内部組織の不適合(ミスフィット)」について、それぞれ40字以内で述べよ。

第2問(配点30点)

A社が市場変化に適応し、新たな成長基盤を築くための「新ドメイン(事業領域)」を、標的顧客と提供価値を明確にして100字以内で助言せよ。

第3問(配点25点)

再定義した戦略を実行するために、A社が取り組むべき「組織構造の変革」と「人材育成の施策」について、100字以内で助言せよ。

第4問(配点25点)

A社が既存の優良顧客(大手金融機関)からの信頼を維持しつつ、新市場へ進出する際の「リスク管理」と「資源配分」の考え方について100字以内で述べよ。

【解答の解説と分析のポイント】

1. 「成功の復讐」の回避

A社のような安定企業は、
過去の成功要因(堅牢な保守)が、
変化への「お荷物」
(*コア・リジディティ)
になりやすいです。

第1問では、
市場ニーズ(動的)と
自社体制(静的)の乖離を
明確に指摘することが求められます。

2. ドメインの再定義

事例Ⅱ的な要素です。

単に「新しいことをやる」のではなく、
「自社の強み(金融知識)」
×
「新しいニーズ(DX)」
を掛け合わせることで、
新興ベンチャーにはない
差別化の源泉を言語化します。

3. 「両利きの経営」の適用

既存事業を捨て去るのではなく、
既存を「現金創出源」(キャッシュカウ)
新規を「成長の芽」(スター)として、
組織を分けて管理する手法が、
リソースの限られた中小企業には現実的です。

受験者に受けたちょっとしたアドバイス

「戦略が市場変化に追いつかない」
というテーマが出た場合、
解答の締めくくりに
「ダイナミック・ケイパビリティ」
(環境適応能力)
の向上を意識すると、
非常に診断士らしい深みが出ます。

① 感知(Sensing)

変化を察知する(顧客との対話)

② 捕捉(Seizing)

機会を捉える(資源の再配分)

③ 変容(Transforming)

自己を作り変える(組織改革)

この3ステップを組織施策に盛り込むことで、
「なぜその組織改革が必要なのか」
という説得力が劇的に高まります。

*Core Rigidity

解説

この言葉は、
元々は強みであったはずの
「コア・コンピタンス(核となる能力)」が、
環境の変化に対応できず、
逆に組織の足を引っ張る
「硬直性(お荷物)」
になってしまった状態を指します。

模範解答は
https://note.com/nakybusiness/n/ncf447cff3fc0

TOP
error: Content is protected !!