- 2019/07/30
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「この回答は以下を前提としています」
① A社を「労働集約的な受託体質から抜け出せない中堅SIer」と定義し、診断を行います。
② 人的資源管理(事例Ⅰ)と事業戦略(事例Ⅱ・Ⅲ要素)の整合性を重視します。
③ 組織図の記述から「機能の重複」と「指揮系統の混乱」を読み解きます。
ステップバイステップ思考による回答構築
ステップ1(意図確認)
IT業界の構造変化
(下請け脱却、高付加価値化)を背景に、
A社の低収益な体質
(常駐メイン、分散した顧客、重複した組織)
を改善する具体策を導き出す。
ステップ2(事実列挙)
● 収益
利益率3%と低い。
1社あたり売上が小さく(1,000万円未満)、非効率。
● 組織
4つの事業部(医療、開発、運用、システム)が並列し、
業務内容が一部重複。
● 人事
社員の多くが顧客先に常駐し、
帰属意識やノウハウ共有に課題。
ステップ3(不確実情報の分離)
協力企業100社との契約条件や、
SE個々のスキルレベルは不明だが、
外注費が原価を圧迫している事実は明確。
ステップ4(最終回答構築)
組織の統合、常駐者の管理強化、
直販(エンドユーザー)比率の向上を軸に回答を構成。
第1問(IT変容の影響)
IT革命により、安価なハード・ソフトやクラウド普及で中小企業のIT導入障壁が低下した。一方で、デファクトスタンダードを巡る競争激化やビジネスモデルの短命化が進み、迅速な経営革新やDX対応の成否が企業の競争優位を左右する大きな影響を及ぼしている。(100字)
第2問(人的資源管理の課題と対策)
課題1
顧客先常駐による帰属意識の低下と評価の困難さ
社員の45%が顧客先に長期間常駐し本社への出勤がないため、帰属意識が希薄化し、上司による直接的な作業評価が困難な状況にある。
対策
定期的な面談や社内行事を実施し、遠隔でも成果や貢献度を反映できる目標管理制度(MBO)を導入して公平な評価とモチベーション向上を図る。
課題2
社内ノウハウの蓄積・共有の不足と属人化
特定顧客に常駐し個人で業務を行うため、技術やノウハウが現場に埋没し、組織的な知見として蓄積されていない。
対策
ITを活用したナレッジ共有システムを構築し、常駐先での成功事例やトラブル対応策をDB化する。また、定期的な技術研修やローテーションを行い、技術の標準化と多能工化を推進する。
第3問(組織構造と事業構造の問題点)
問題点
組織が事業部制を敷くが、運用・開発業務が各事業部に分散し、機能の重複や経営資源の分散、部門間のセクショナリズムが生じている。また、メーカー系の下請けや小規模案件が乱立し、低収益な事業構造となっている。
改善策
重複する機能を統合して「開発」と「運用」の専門性を高める機能別組織へ再編し、経営資源を集中させる。同時に、エンドユーザーへの直販営業を強化し、案件を大型化・高付加価値化する。
第4問(戦略的事業展開の可能性)
既存のメーカー下請け中心の「御用聞き型」から、エンドユーザーの経営課題を直接解決する「提案型SIer」への転換を図る。具体的には、医療分野等の強みを持つドメインに特化し、運用で培った顧客理解を活かして、システム企画からアウトソーシングまでを一気通貫で受託するストック型ビジネスを強化する。これにより案件単価と利益率を高め、外注依存を脱却して自社SEの稼働率と専門性を向上させる。(200字)
【確実な事実】
・A社は売上の7割がメーカー系(二次受け)であり、
価格決定権が弱い。
・組織図上、似たような業務(運用・開発)が
複数の事業部に分断されている。
【推測・意見】
・営業利益率3%は、
協力企業(外注)への支払いが「丸投げ」に近く、
マージンが薄い構造を反映している。
・小規模顧客(250社)の乱立は、
管理コストを増大させ、
非効率の温床となっている。
【検証が必要な情報】
・SEの「低位安定」している賃金が、
優秀な人材の流出を招いていないか(人材の質的分析)。
この回答の確信度:90%
理由:事例Ⅰの典型的な「常駐型IT企業の課題」を網羅し、
与件文の数値データを論理的に解釈しているため。
この回答の限界
財務諸表がないため、
定量的な損益分岐点分析に基づく
コスト削減策までは提示できていません。
より正確な情報を得るには
A社の「顧客別利益率」や
「SEの稼働率」などの内部データを確認し、
どの取引を切るべきか
(選択と集中)の判断材料にしてください。
私が間違えやすいポイント
IT業界の専門用語
(クラウド、SaaS等)に走りすぎると、
診断士試験の採点基準
(汎用的な組織・人事論)から
外れるリスクがあります。